受験体験記Hくん①  

 まず初めはHくんです。

 Hくんは、解き方を教えるとできるのですが、自分で考えることまではなかなかできない子でした。私からの指示を待ち、学習意欲があるようにも見えませんでした。教室が好きではなく、台風の日には「Go Up吹き飛ばされたらいいのに」と言っていたと妹が教えてくれたほどでした。

 そんな彼がどんどん成長していったのは、彼の性格によるものが大きかったと思います。心が純粋で驚くほど素直でした。そして常に前向きでした。私が言ったことは正面から受け取り、できる、できないにかかわらず、実行しようとしました。話を聞くときは、常にじっと私の顔を見ていました。「話している人の顔を見る」のお手本のような子でした。

 あるとき、「説明を聞いてもよく分からないときは、もう一回聞きたいって言ってね。」と言うと、「先生に言われなくてもそうしてるで。前は分かったふりしてたこともあったけど、今はちゃんと分からへんって言えるから大丈夫や。」と返ってきました。このときに私は彼の合格を確信しました。どんどん吸収していき、解けない問題も私が少しヒントを出すと、「ここからぼくにやらせて。」と自分で考えるようになり、「なるほど!」「そういうことか!」「もう解ける!」と楽しそうでした。私も彼との時間が楽しく、充実したものでした。志望校には、東大京大医学部コースで合格という快挙でした。

 次回に続きます。