左手だらり問題② 

 前回、左手をだらりと机の下に下げている子からは、学習に対する意気込みを感じないと書きました。

 彼らに足りないものは何でしょう。「自分で考える」「自分で創り出す」という経験ではないかと思います。学校で言われたことを言われた通りにするという経験を積み重ねてきた子は、指示を待ってしまいます。解き方を教えてもらって、それを覚えて、その通りに解こうとします。それこそが正しいことだと思っているのかもしれません。言われた通りにするのは楽ですから。脳の癖を変え、新しく癖付けるのはなかなか困難です。

 ある子が年長さんの時に、道路にある数字が書かれた標識は何かと聞いてきました。「例えば、40と書いてあれば、この道路は1時間に40km進む速さ以下で運転しなさい。ということよ。」と教えました。彼は、「ぼくは幼稚園に行くのに、40の標識の道を通っているんや。15分かかるから、15分って時計の半分の半分やろ。そうしたら、幼稚園までは、40kmの半分の半分やな。40の半分で20その半分で10kmってことやな。」と言いました。その後お母さんから、「車に乗ったらずっと車の速度メーターを見ながら距離を計算しています。」と教えていただきました。速さを学習するのは小学5年生です。道のり=速さ×時間と習います。そんなことを知らなくても彼は正しく答えを自分の力で導き出しました。

 道のり=速さ×時間と覚えて、それを使って解いても面白くないのです。きっとそこからは速度メーターで時間を計算してみようとは思わないのではないでしょうか。新しいことを知りたいと思う好奇心は、解き方を習った時点でつぶれてしまいます。だから、考える面白さを知ってほしいのです。「先生!難しい問題考えてきた?」と解いてやろうという気満々で毎回聞く子も、自分で難しい問題を考えてくる子もいます。そうやって考えて解けた喜び、ダメなら次の手というふうに試行錯誤する面白さを知ることが、この課題は自分のものだ。何とかして解いてやろうという当事者意識につながるのではないでしょうか。 解き方を教えてもらって、それを真似るだけなんて、面白いところをすっとばしてつまらないじゃないですか。そういうのはもうAIに任せてしまいましょう。そして、まずは、パズルやブロックなど手を動かして考えるものからチャレンジしてみましょう。そして私も、「左手を出しなさい」というのはやめて、子どもたちが、両手を出して挑みかかりたいくらい「美味しそうなご馳走」に代わる面白い問題を考えねば。