愛情の大安売り  

 レッスンの後、お父さん、お母さんは子どもたちにどう声をかけていらっしゃるのでしょうか。

 子どもは親が思う以上に後ろに座っているお父さんお母さんの存在を意識しています。       

 暗唱ができた。取り組みがうまくいった。できなかったことができるようになった。こういう時はぱっと後ろを振り向いて満面の笑みをみせてくれます。お父さんやお母さんも笑顔でうれしい瞬間です。

 でも、苦手な取り組み、なかなかできるようにならない取り組みも、もちろんあります。そんな時、様々な方法で子どもたちは逃げ出そうとします。やりたくないと拒む子。ふざけておちゃらけて、できないことを何とかごまかそうとする子。興味をなくし、あくびをしたり、きょろきょろしたり、やりたくないことをアピールをする子。

 私は、子どもたちの態度に対して、全く気付いてないふりで、取り組みを進めます。それが必要な取り組みであり、できなくても繰り返すうちにできるようになっていくことを知っているからです。私もご両親も大人で経験を積んで、そのことを知っています。でも経験の少ない子どもたちは、嫌なことからは逃げ出したい。当然です。「がんばればいい」は、今の私たちだから言えることなんですよね。子どもたちにもいつかは「がんばればできる!」と思ってもらいたい。でも今はまだまだ発展途上。

 そこで、お父さんお母さんには見守ってもらいたいんです。最初の質問、「どう声をかけていらっしゃいますか。」に戻りますが、「今日はふざけてたね。」「もっとがんばればよかったのに。」なんていうのはやめて下さいね。叱るタイミングを考えている私より先に後ろから「早くやりなさい。」も厳禁です。

 ふざけてても、やらなくても子どもにとっては精一杯の抵抗なんです。「よくがんばったね。」でいいのです。そう言われて、「がんばってないのにがんばったって言われた。うれしい。ずっとこれでいこう。」なんて思うわけがない。お父さんお母さんは全てを受け入れるよ。がんばろうね。という態度が子どもに絶対的な安心感を育み、踏み出す勇気を与えるのだと思うのです。ふざけて、やらなくて叱るのは私の役目。安全な場所を用意して送り出し迎え入れるのは親の役目でいきましょうね。愛情の大安売りでいきましょう。